「もしかして自分に原因があるのかも……」 妊活を始めると、そのような不安を感じる男性もいるのではないでしょうか。実は、不妊カップルの約30〜40%は男性側に要因があるといわれています。わたしたちもそのうちの1組です。

今回はWHOなどのエビデンスに基づき精液検査の基準値の見方や、元気な精子を育てるために今からできるポイントを分かりやすく解説します。

精液検査の「基準値」を正しく理解しよう

WHOの精液検査マニュアル(2021年 第6版)に基づく主な基準値(下限値)は以下の通りです。

検査項目基準値意味
精液量1.4mL以上1回の射精で出る量
(小さじ1/3程度)
精子濃度1,600万/mL以上1mLの中にいる精子の数
総精子数3,900万以上1回の射精に含まれる精子の数
精子運動率42%以上動いている精子の割合
前進運動率30%以上まっすぐ元気に進む精子の割合
正常形態率4%以上形が整っている精子の割合

「形が悪い精子が90%以上」でも落ち込まなくていい理由

検査結果を見て「正常な形が4%しかない!」とショックを受ける方がいますが、安心してください。人間の精子はもともと、わずかな歪みも含めれば大半が「形が悪い」と判定されます。「4%以上」が正常であれば、医学的には十分妊娠の可能性があるとされています。

精子の状態は「毎回違う」のが当たり前

精子の結果は、その時の体調やストレス、前回の射精からの期間によって大きく変動します。ですから、検査結果が良くなかったからといって妊娠の可能性が低いとは限りません。

「人工授精の日だから失敗できない!」というプレッシャーで数値が悪くなってしまうことも珍しくないのです。もし結果が悪かったとしても、日を改めて複数回の検査(2〜3回)を行うことが、正しい評価につながります。

なぜ「自然妊娠」は奇跡的なのか?

数億匹の精子が放出されても、卵子にたどり着くのはわずか数百匹。 さらに、タイミングが完璧であっても受精できる確率は約50%程度と考えられています。

精子は長い旅路の中で、女性の体内の粘液に阻まれたり、途中で力尽きたり、迷子になったりします。だからこそ、分母となる「精子の数」や、泳ぐ力である「運動率」を一定以上に保つことが大切なのです。

男性不妊の主な原因と治療法

もし数値が基準に届かない場合、以下のようなステップで治療を検討します。

  1. 内服薬
    漢方薬やビタミン剤などが処方されることがありますが、精子の劇的な改善は難しいのが実情です。あくまで「土台作り」と捉えましょう。
  2. 精索静脈瘤の手術
    男性不妊の原因の約40%に見られるのが、精巣の周りの血管がコブのように腫れる「精索静脈瘤」です。これは手術によって精子の質が改善する可能性があるため、一度は泌尿器科で診察を受けることをおすすめします。
  3. 人工授精・体外受精
    人工授精:卵子に近い場所へ元気な精子を送り届けて、出会いの確率を高める方法
    体外受精 / 顕微授精:体外で受精させ、育った胚盤胞を子宮に戻す方法。

今日からできる!「強い精子」を育てる5つの習慣

精子は精巣で毎日作られていますが、元の細胞から完成するまでに約70日〜80日かかります。つまり、今の生活改善が結果に出るのは約3ヶ月後。今日から始めましょう。

①2~3日に一度 射精する
「精子を濃くするために禁欲する」のは逆効果です。古い精子は酸化してダメージを受け、運動率が下がります。2〜3日に一度は射精(マスターベーションでOK)し、常にフレッシュな精子に入れ替えましょう。

② 精巣を「熱」から守る
精子は高温に非常に弱いので、以下の点に気をつけましょう。
・タイトな下着を避ける
・長風呂やサウナを控える
・膝の上でノートパソコンを使わない
・長時間の自転車移動を避ける

③食生活と栄養素
バランスの取れた食事に加え、精子の生成に欠かせない「亜鉛」や、抗酸化作用のある「ビタミンE」「コエンザイムQ10」「L-カルニチン」などの摂取が推奨されます。

④生活習慣の見直し
喫煙、過度な飲酒、肥満、睡眠不足、ストレスはすべて精子に悪影響を与えます。「体に悪いことは、精子にも悪い」と考えましょう。

⑤性機能障害(ED・射精障害)への対応
男性不妊の原因の約10%は、勃起障害や射精障害といった性機能の問題です。これは専門のクリニックで治療可能なことが多いため、一人で悩まず相談することが解決への近道です。

まとめ:男性にしかできない「妊活」がある

女性の卵子は年齢とともに数が減り、老化を防ぐことは難しいのが現実です。 しかし、男性は健康であれば高齢になっても精子を作り続けることができ、努力次第で質を向上させることも可能です。

「妊活は二人三脚」。まずは自分の状態を知り、パートナーと一緒に規則正しい生活から始めてみませんか?